今回紹介する映画は 幸せの百貨店へようこそ
概要
2018年のオーストラリアのコメディ時代劇
監督・脚本:ブルース・ベレスフォード
原題:LADIES IN BLACK
上映時間:109分
原作:オーストラリアの作家マデリン・セント・ジョンの1993年の処女作『The Women in Black』
この作品は、1950年代のシドニーのデパートを舞台にした風俗喜劇で、
彼女が執筆した4作品の中で、唯一オーストラリアが舞台になっている。
4半世紀かけて映画化へ!友人との約束を果たした監督の熱意に感動
何と!ベレスフォード監督と原作者セント・ジョンは、シドニー大学時代の友人だったのだ。
ことのキッカケは、1993年まで遡る。
ベレスフォード監督は友人がセント・ジョンの処女作を
べた褒めするのを聞き、急いで本屋へ向かったそうだ。
そして、彼は『The Women in Black』にすっかり魅了され、
この作品の映画化を決意した!
しかし、ここからの道のりが長かった~
先ずは、大学時代の友人でもあったセント・ジョンを探す事から始めなくてはならない。
監督は、知人や出版関係者をあたり、
やっとのことで、イギリスのノッティングヒルに住む彼女と再会。
そして、いつか映画化すると彼女に誓った。
ところが、今度は資金提供機関に拒否され続け、映画化実現は風前の灯火に~
それでも、監督は友人との約束を果たすまで諦めなかった。
何と…25年もの歳月を費やす事になるのだが…
そんな中、転機が訪れる。
決定打となったのは、アラナ・ジッツァーマンが共同プロデューサーとして参加したことだった。
彼女の実績と行動力で資金を集める事ができたのだ!
そして、2017年シドニーで撮影に漕ぎつくと、
翌2018年、『LADIES IN BLACK』はオーストラリア、ニュージーランドで公開されたのだ。
こうして、25年に及ぶ2人の約束は果たされたが…
セント・ジョンは、映画を観ることは叶わなかった。
残念なことに、彼女は、2006年に肺気腫のためこの世を去っている。
享年64歳の若さだった。
監督も彼女の生前に見せられなかったことをとても悔やんだ…
どれだけ彼女にみせたかっただろう
この作品は、初週末にはオーストラリアで1,865,134ドルの興行収入を記録し、
『ジョニー・イングリッシュ 逆襲』に次いで2位となり、
2018年のオーストラリア国内映画としては最高の興行収入を記録した。
個人的には、『ジョニー・イングリッシュ 逆襲』よりも断然おススメだ!比べるまでもない~
キャスト紹介
みんな大好きノスタルジック作品。どこか懐かしくてジワル
登場人物も素朴で親しみを感じたのだが、
そんなキャストの中に…
以前、この暇つぶしブログでも紹介した、
オーストラリアのドロドロでエグすぎるドラマ【ウェントワース女子刑務所】で
悪役の囚人マリー・ウィンターを演じたスージー・ポーターを見つけてしまった!
ところが、悪役にも拘らず、どこかいいお母さんのイメージが拭えなかったポーターが
本作では、イメージ通り本当に良いお母さんを演じていた。しっくりくる
マグダ/ジュリア・オーモンド | スロベニアからの移民 グッズ百貨店で“モデル・ガウンズ”の場所を借り 高級ドレスを販売する実業家 |
レスリー・マイルズ(リサ)/アンゴーリー・ライス | 高校卒業を間近の16歳 内気で読書好きな性格だが 夢は女優か詩人になること レスリーの名前が嫌いでグッズでリサと自己紹介する |
フェイ・ベインズ/レイチェル・テイラー | グッズ百貨店のドレス売り場の店員 美人で独身 なかなか理想の相手と出会えないでいる |
パティ /アリソン・マクガー | グッズ百貨店のドレス売り場の店員 子供が欲しいが協力的でない夫に不満を感じている |
ルディ・ヤノーシ/ライアン・コー | マグダとステファンの友人でハンガリー移民 メルボルン在住の野心家 |
マイルズ夫人/スージー・ポーター | リサの優しい母親 大学進学を希望するリサを支える アルバイトを始め親離れしていくリサに 戸惑いを感じながらも暖かく見守る |
マイルズ氏/シェーン・ジェイコブソン | リサの父親 女の子に大学は必要ないと考える古風なタイプ |
ステファン /ヴァンサン・ペレーズ | マグダのハンガリー人の夫で専業主夫 教養があり料理やワインなどの知識をリサに与える |
あらすじ
シドニー 1959年
季節はクリスマスシーズンに入り、
名門”グッズ百貨店”の外観には大きなサンタクロースが飾られていた。
大通りには何台もの路面電車が行きかっている。
「足元にご注意を」
その中の1台が停車し、グッズ百貨店で働くフェイ・ベインズが降りてきた。
停車駅は、百貨店のすぐ目の前にある。
「おはよう」
ちょうど、同じドレス売り場で働くパティが出社してきた。
2人は、更衣室に向かって階段を上がる。
「今週は忙しくなる」
フェイが愚痴をこぼすと
「毎年のことよ」
とパティは軽く受け流した。
店内に照明が点灯し始めた。
間もなく開店の時間だ。
店員達が次々と出勤すると更衣室に入って来た。
彼女たちは、華やかな私服から黒い制服に着替えると、
マスカラに真っ赤な口紅をさし身だしなみを整え、
各々の持ち場へ颯爽と散って行った。
「週末は?」
開店準備に追われる中、フェイがパティへ訊いた。
「まあまあ」
「フランクと?」
「あの人は1人で釣り」
パティは既婚者で、
彼女の夫フランクは、チョット風変りな男だった。
すると、売り場責任者のカートライトさんが、若い新人を連れているのが目に入った。
「まず挨拶よ」
何やら、彼女は小声で新人に指示を与えている。
「フェイ あれ」
パティがフェイに視線で教えた。
「彼女たちの下についてね」
カートライトさんはそう言って、新人を従えて向かってくる。
「去年の子はひどかった」
繁忙期になるとアルバイトが入って来るのだが…
「おはようございます カートライトさん」
2人は、礼儀正しく挨拶した。
「マイルズさんよ ファーストネームは…」
「レ…リサです」
新人のリサは、メガネをかけ髪をおさげにして、とても地味な印象だった。
「リサには繁忙期の間手伝ってもらうわ 2人からいろいろ教わって」
「よろしくね こき使うわよ」
パティが冗談交じりに脅すように言った。
そして、いよいよ開店の合図がされた。
続きは本編で!
ソニー・ピクチャーズ 公式チャンネル
勝手に私見考察
移民政策のお手本
現在、日本でも問題になっている移民!
あの移民国家オーストラリアでも、移民は嫌われていたようだ。
そりゃそうだ。
育ってきた環境も教育も宗教も全く違う人々と
いきなり仕事したり隣近所で生活をすることになるのだから~
しかし、この作品で描かれている、
移民との社会統合の過程は、とても理想的なものではないだろうか。
だって、移民の方が高い教養を持ち、おまけに上流階級の人々で、
周りの人々にいい影響を与え、カンフル剤的役割を果たしているのだから。
それでは、日本の場合はどうなのか?
安い労働力欲しさに、生活水準も教育水準も日本人とはかけ離れた国の人々が大半ではないか?
おまけに、イスラム教信者というかなり影響力の強い宗教の信者も増えている。
さぞ、近隣住民にとっては頭の痛い事だろう。私も正直嫌だ!
そして、それは移民にとっても不幸だし、一体全体、誰得なの?
現在の移民政策にとって、とてもお手本になる作品でした。
思春期の娘を持つ母親のお手本
キャスト紹介でも書いたが、
1人娘のレスリーの成長を暖かく見守る母親のマイルズ夫人!
本当にお手本にしたい!
アルバイトを始めた娘が、どんどん成長して自分の手から離れていく…
親としては嬉しい反面、とても寂しいものだろう…
そのマイルズ夫人の気持ちが~ わかるわ~
それでも、彼女は…
レスリーって名前が嫌だと言われても、
せっかくの手作りのドレスを直せと言われても…
娘にノーを突きつけず、歩み寄りその殆どを受け入れたのだ!
私なんて未だにあーだこーだとついつい言ってしまって
娘から冷たい視線を浴びる始末~
私も頑張ろう!
と前向きな気持ちになれる作品でした。