今回紹介する映画は 幸せの列車に乗せられた少年
・概要
2024年10月にローマ映画祭でワールドプレミア上映された後、翌12月Netflixにて配信された。
監督:クリスティーナ・コメンチーニ
上映時間:106分
原題:Il treno dei bambini(子供列車)
原作:イタリアの小説家ヴィオラ・アルドーネの
2019年に発表した長編小説『「幸せの列車」に乗せられた少年』
この小説は、イタリア国内で30万部を売り上げるベストセラーとなり、
世界33言語で刊行されている。
本当にあった幸福列車…その背景とは
幸福列車とは、敗戦後のイタリア南部で貧困に苦しむ子どもたちの支援を目的とした救援活動であり、
主にイタリア女性同盟(UDI)とイタリア共産党(PCI)が中心になり推し進めた。
多くの子供たちを運んだ列車は「幸福列車」と呼ばれ、
1945 年から 1950 年にかけて、実に7 万人~ 10 万人の子どもたちが、北部、レッジョ エミリア地域、モデナ地域、ボローニャ地域の農民の家族に預けられた。
しかし、そのホストファミリーも決して裕福な家庭ではなかったという。
また、イタリア共産党が推進している事から、
国民の間では疑念を抱く声も多かった。
イタリア映画には日本人好みの名作映画が多い
数あるヨーロッパ作品の中でも、日本と価値観の近い作品が多いと思うのは私だけではないでしょう
同じ島国だからか…または敗戦国同士だからか…
実は、共通点はそれだけではなく
何と…日本だけではない
”おもてなし文化”がイタリアにもあったのだ!
そして、この作品からもそれを感じる事が出来る
キャスト紹介
デルナ/バーバラ・ロン | 元パルチザンで恋人を戦争で亡くし独身 ホストファミリーとしてアメリーゴを引き取る |
アントニエッタ・スペランツァ/セレナ・ロッシ | アメリーゴの母親 夫はアメリカへ行ってしまい、 シングルマザーでアメリーゴを育てている 生活はその日暮らしの貧乏 |
アメリーゴ・スペランツァ/ クリスチャン・セルヴォーネ(少年時代) ステファノ・アコルシ | 主人公の著名なバイオリンソリスト 母親の死を切っ掛けに故郷に帰郷する事に |
カーパ・エ・フィエロ/ フランチェスコ・ディ・レヴァ | アントニエッタの不倫相手 広場の露店主でアントニエッタの古着を売ってくれる |
マッダレーナ・クリスクオーロ/ アントニア・トルッポ | イタリア共産党党員で 住民の反対や誹謗中傷を受けながらも 幸福列車の社会活動を勧めている |
アルチーデ・ベンヴェヌーティ/ イヴァン・ゼルビナティ | デルナの兄で木工職人 楽器の修理をしている アメリーゴの才能に気づきバイオリンを教えてくれる |
あらすじ
著名なバイオリンソリスト アメリーゴ・ベンヴェヌーティは
今夜開催されるコンサート会場へと入って行った。
彼が控室のドアを開けると電話が鳴っている。
「はい」
アメリーゴは受話器を取った。
「母さん 今着いた これから準備だ 何だい? いつ? 分かった
もちろん そうする もう切るよ 終わったら電話する じゃあ」
受話器を置いたアメリーゴは、そのまま崩れ落ちるように椅子に座った。
その時、誰かが控室のドアをノックした。
「はい」
「失礼します マエストロ」
アシスタントの女性が入ってきた。
「準備しないと今夜は満席ですよ 靴はどちらを?」
彼女はきれいに磨かれた靴を2足選ぶとアメリーゴに見せた。
ところが、彼はコンサート前にも拘わらず上の空の様子だ。
「どうしました?」
アメリーゴの異変を感じた彼女が心配そうに訊ねた。
すると、アメリーゴは呟くように言った。
「母が亡くなった」
「今日は中止に?」
彼女は突然の訃報に驚いた様子だが、
「いや まさか」
アメリーゴはこのまま開催すると答えた。
「無理することは…」
「大丈夫だ やれる」
心配する彼女をよそにアメリーゴは着替えに取り掛かった。
「問題ない」
と付け加え、準備を整えた彼は部屋をあとにした。
アメリーゴが舞台そでに着くと
既に、演奏者たちが各々演奏の準備を始め、
それを見守る観客たちは、
今か今かと、開演時間を待ちわびている様子だ。
後は、出番の合図を待つばかりだったが…
その時ふっと、アメリーゴは1人の少年がこちらを見ている事に気づいた。
その少年は、とても痩せこけ目ばかりが多きく薄汚れた顔をしている。
おまけに、上半身はあばら骨が浮き出るほどで何も着ておらず短パンに裸足だ。
しかし、アメリーゴはその少年を知っていた…
その時
「どうぞ」
アメリーゴに出番の合図がかかった。
しかし、彼は動揺を隠せない
あの少年がいるはずないのだ。
「舞台へ」
不安そうなスタッフは再び声をかけた。
アメリーゴが咄嗟に少年の方を振り向くと
そこには誰もいなかった…
次に、アメリーゴは気持ちをたて直すかのように
会場の天井を仰いだ。
そこは、まるで夜空に煌めく星のようにライトが輝いている。
いよいよアメリーゴが舞台中央に進むと、
会場は大きな拍手に包まれ、
演奏者たちも一斉に立ち上がり今夜の主役を迎えた。
アメリーゴはスタンバイすると、
軽く頭を下げて観客へ礼を返し、ハンカチで額を拭った。
そして、彼は指揮者へ合図を送り、ソロパートの弓を引く。
ところが…
どこからか
聞き覚えのある歌声が聞こえてくるのだ。
あれは…
子供の頃、よく聞いた母の歌声…
そんなはずはない
アメリーゴの脳裏にあの遠い昔のことが蘇る。
忘れ去ったむかし…
あの痩せこけて貧しかった少年の頃…
間違いない
あの瘦せっぽちの少年は…
アメリーゴ自身なのだ。
続きは本編で!
只今こちらの動画配信サイトでご視聴頂けます
(配信は投稿時のものとなります)
勝手に私見考察
ここからはネタバレを含みます
まさに!イタリア版『ALWAYS 三丁目の夕日』
ジワジワとくるヒューマンドラマの傑作!
誰もが苦しい逆境の中で、
お互いに思いやり、助け合い力強く生き抜く姿に涙腺崩壊!
そして、この作品には
学もなければコミュ力もない母親アントニエッタが、
我が子の将来を考え、手放す決意したように
母親の強い愛情とやるせなさや
故郷を去る子供の葛藤を描き
同じ母親として胸に迫るモノがあった…
アントニエッタは、冷たい母親に見えたかもしれないが、
冒頭の空爆シーンで分かるように、
自分の身を顧みず我が子を捜した彼女は、実はとても愛情深い母親なのだ。
学もお金もない しかもシングルマザーなんて辛すぎる~
また『幸福列車』によって、普通の子供らしい生活を味わった子供たち。
彼らの故郷に対する複雑な気持ちも描かれ、支援活動の難しさも感じられた。
子供たちの健気なところや友情も胸アツだった~
みんな、そんな頃の懐かしさも感じたのではないかなぁ