ブログランキングに参加しています

【映画:テレーズ 情欲に溺れて】禁断のエロスを描いたセンセーショナルな自然派文学の映画化

スポンサーリンク

今回紹介する映画は テレーズ 情欲に溺れて

2013年アメリカ製作 監督・脚本:チャーリー・ストラットン

原題:In Secret  (上映時間:106分)

原作:フランスの文豪エミール ・ゾラによる1868 年の小説『テレーズ・ラカン[teʁɛz ʁakɛ̃]』

公式サイトは↓こちら

自然主義派VSロマン主義派

この小説は、1867 年にフランスの文学雑誌”L’Artiste”で初めて連載されました。

すると、まだまだロマン主義文学が主流の世の中で、姦淫と殺人を描いたスキャンダラスなストーリーは、「腐敗した文学」だと批判されてしまいます。

特にジャーナリストのルイ・ウルバッハの酷評にゾラは疲れ果ててしまったようです。

そこで、ゾラはこの作品をこのように説明しています。

テレーズ・ラカンでは、キャラクターではなく気質を研究したかったのです。それが本全体です。私は、神経と血に主権的に支配され、自由意志を欠き、肉の死によって人生のあらゆる行為に引きずられるキャラクターを選びました。テレーズとローランは人間の野蛮人であり、それ以上のものではありません。

そしてこの作品は、彼の最初の自然主義小説とされています。

引用:テレーズ・ラカンWikipedia

何だか小難しいですが、簡単に説明するなら…

ダーウィンの進化論に大きな影響を受けたゾラは、当時の理想主義の世の中に、これがリアリズムだ!

と一石を投じたところ、批判が噴出したため

”科学的アプローチから研究した、人間の精神を実証したまでだ!”

とゾラが論破したという所でしょうか。

これよりゾラは、自然主義文学の第一人者となり、日本文学にも大きな影響を与えました。

その後、ゾラ自身が書いた 1873 年の戯曲が最初に舞台化されると、映画、テレビのリミテッドシリーズ、ミュージカル、オペラなど、現在に渡って何度も採用されまています。

それほど、ドラマチックな物語なのです。

こうした、人間の精神的研究を踏まえた作品なんだと知ると、

また違った感想を持つかもしれません。

『テレーズ 情欲に溺れて』DVD予告

♦スポンサーリンク♦

只今こちらの動画配信サイトでご視聴頂けます

(配信は投稿時のものとなります)                               

スポンサーリンク

キャスト紹介

予告編では、豪華キャスト出演と紹介されています。

確かに、ヒット作品の出演者たちにオスカー女優ジェシカ・ラングと実に豪華です!

オスカー女優ラングは、この作品自体の評価は低いものの、彼女の演技は高い評価をされました。

”主役を奪う”と評されたラングの演技は流石です!

また、カミーユ役には【ハリーポッター・シリーズのマルフォイが、青白い顔をして出演しています。

テレーズ・ラカン/エリザベス・オルセン(少女時代/リリー・ライト)

幼い時、叔母のラカン夫人に預けられ、抑圧された環境で育ちました。従兄のカミーユとの望まぬ結婚を強いられます

カミーユ・ラカン/トム・フェルトン(少年時代/ディミトリエ・ボグダノフ)

ラカン夫人の虚弱な息子でテレーズの従妹

ローラン・ルクレア/オスカー・アイザック

テレーズを誘惑するカミーユの幼なじみで同僚

ラカン夫人/ジェシカ・ラング

カミーユの母親でテレーズの叔母。体の弱い息子の世話や結婚をテレーズに強います

あらすじ

1860 年代のフランス・ヴェルノン

母親を亡くした少女テレーズは、父親と一緒に、叔母のマダム・ラカンの家に連れてこられました。

父親は、虚弱の息子を抱えたラカン夫人に、養育費の支払いを条件にテレーズを預けたのです。

父親は「いつか迎えに来る」と言い残しテレーズを置いて去って行きました。

ラカン夫人の息子カミーユはとても虚弱で、ラカン夫人は彼を甘やかし溺愛しています。

一方、テレーズには、厳しく躾をし支配的に接しました。

ある日、子ども部屋のベッドでカミーユを寝かしつけたラカン夫人は、横のテレーズの枕の下から父親の写真を見つけます。

すると彼女は、今日も窓の外を眺めているテレーズに「お父さんは、もう来ないわ」と言いました。

「きっと来る」テレーズは父親の迎えを、一日千秋の思いで待っていたのです。

しかしラカン夫人は、父親を信じているテレーズに兄は約束を守らないと残酷に言いました。

ラカン夫人にとってテレーズは、お金の担保であり、カミーユの世話人となってくれる守護天使のような存在だったのです。

こうして、父親に捨てられたテレーズは、ラカン夫人の下で抑圧された生活を強いられるのでした。

そして月日は流れ

美しく成長したテレーズは、何の刺激の無い退屈な暮らしの中で、性的な衝動を感じるようになっていました。

そんなある日、ラカン夫人がテレーズ宛の手紙を持ってきました。

その手紙は、アフリカにいる父が亡くなったという悲しい知らせでした。

「私はどうなるの?」テレーズは不安になります。

「少しは年金を残してくれたはずよ。それで暮らしていきましょう」とラカン夫人は何の相談もなく、既に決めているようです。

そして、せき込むカミーユを連れて急いで家の中へ戻って行きました。

残されたテレーズは、この先もこの生活が続く現実に失望していました。

その後まもなく、カミーユの仕事が見つかり、 カミーユは一家でパリへ引っ越そうと嬉しそうにテレーズに報告します。

ラカン夫人は、カミーユが働く事には反対でしたが、カミーユの気持ちは変わりませんでした。

そして、食卓を囲みながらラカン夫人は、家計の為に店を開いてレースを飾るわと

既にパリでの生活を計画していました。

するとカミーユは、思いもかけない事を言い出します。

「結婚式の後、直ぐに発とう」

それを聞いたテレーズは「誰の結婚式?」と興味深々に訊きます。

するとラカン夫人は「あなたよ」とテレーズに打ち明けました。

テレーズは突然の話に、「相手は誰なの?」と嬉しそうに訊きます。

「もちろんカミーユよ」ラカン夫人は当然とばかりに答えます。

すると、テレーズの表情は、見る見る曇りました。

それを見たラカン夫人は

母親が誰だかも分からないテレーズにとって、カミーユが居て良かったのだと彼女を諭したのです。

そして、目の前の2人は、とても嬉しそうに微笑みあっています。

テレーズは、望まない結婚まで押し付けられた現実に、絶望していました。

一家はパリに引っ越し新たな生活を始めました。

しかし、カミーユは仕事に不満ばかりで疲れ切ってしまい、テレーズとの夫婦生活にも関心がありませんでした。

おまけに、毎週木曜日の夜には、家に4人の客人を招きドミノ会が開かれます。

テレーズは、それにも付き合わなくてはなりませんでした。

そんなある日…

カミーユは、幼馴染のローランドと職場で偶然再会し、彼と一緒に帰宅します。

ラカン夫人は、ローランドとの再会に喜び、ドミノ会の仲間と一緒に夕食をする事になりました。

そこで、彼が画家志望だった昔話に会話が弾みます。

これを切っ掛けにローランドは、カミーユの肖像画を描く事になり、何度も訪れるようになりました。

ローランドは、カミーユにはない男性的な魅力に溢れ、テレーズは性的な刺激を彼に感じるようになります。

そして、ローランドもそれを見透かしたように、

肖像画を描きながら、カミーユと刺激的な会話を楽しみます。

テレーズは、筆を動かす彼の指に心を揺さぶられながら、欲情を抑えていました。

また、ローランドもテレーズに興味を抱くようになります。

そして、いよいよカミーユの肖像画が完成しました。

カミーユはとても喜びます。

しかし、暗い描写で描かれ、ラカン夫人は不満げでした。

「この子の魂を描いたの?」とラカン夫人はローランドに尋ねます。

「見たままを描いたんですよマダム」

丁度その時、店に来店客が来たようで、ラカン夫人は階下へ降りていきました。

カミーユは「素晴らしい、正に傑作だ。ありがとう」とローランドを絶賛すると、祝杯を上げるため踊るように出て行きました。

部屋には、テレーズとローランドが残されました。

「気に入った?」ローランドはテレーズに尋ねます。

「画才はあったのね」テレーズは答えました。

すると…

「脱いで」

ローランドはこの機会を逃さずテレーズを誘惑します。

「時間がないわ」

テレーズはそう答えたものの

もう気持ちを抑える事は出来ませんでした。

テレーズが無心にドレスのボタンを外し始めると、ローランドもテレーズに熱い口づけをします。

そして、2人は、激しく求め合うのでした…(書いてるこっちがハズイわ~)

続きは本編で!

♦スポンサーリンク♦

只今こちらの動画配信サイトでご視聴頂けます

(配信は投稿時のものとなります)                               

勝手に私見考察

ここからはネタバレを含みます

この映画を何気に観始めたところ

テレーズとローランドの破滅的な関係に惹きつけられ見入ってしまいました。

強く求め合った2人のはずなのに…

邪魔な夫を殺害した途端に精神的に追い詰められた2人は、勝手に自滅していきます。

ではここで、テレーズを深堀ってみたいと思います。

テレーズは父親に捨てられ、支配的なラカン夫人に育てられました。

彼女の子供時代は、大人から失望させられ続け、また希望や甘えといった子供らしい時期が皆無でした。

また、この抑圧された日々によって、好色や憎悪といった感情ばかりが、より強くなったのではないでしょうか。

そんな心の隙に、同じように孤独なローランドが現れ、2人は一気に燃え上がりました。

その後の2人は、衝動的な感情で物事を短絡的に考え、邪魔になったカミーユを殺害する計画を企ててしまいます。

そして、短絡的な思考は最後まで治らず、追い詰められた2人は死を選び、ラカン夫人の目の前で服毒自殺するという悲劇的な最期を選択しました。

何とラストは、息子を殺害した2人のもがき苦しんで死んでいく姿を、じっと見つめる体の不自由なラカン夫人!

この強烈なシーンで終わります。

しかし、バッドエンドでありながら…納得できる最後でした。

これこそが、科学的精神実証だからでしょうか!

とは言え、フランス映画の主人公に多いこの”感情的で短絡的な思考”(その為でしょう、フランス映画は苦手です)

ゾラは、この思考の主人公2人を野蛮人だと言っています。

彼が実証した精神は、155年後を生きる私たちにとっても、要注意な思考パターンではないでしょうか。

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました