今回紹介する映画は 美しき獣
【美しき獣】解説
2012年アメリカ製作 監督、脚本:ザン・カサヴェテス
原題:Kiss of the Damned
【美しき獣】は、カサヴェテス監督の長編映画初監督作品で2013年にストラスブールヨーロッパファンタスティック映画祭(フランス)で最優秀国際長編映画賞を受賞しています。
カサヴェテス監督は、【こわれゆく女】【グロリア】のジョン・カサヴェテス監督の次女。母親は、有名女優ジーナ・ローランズ。兄のニック・カサヴェテスと姉アレクサンドラ・カサヴェテスも俳優兼監督という芸能一家出身です。
【美しき獣】は、2007年に監督デビューを果たしたザン・カサヴェテスが監督・脚本を務めた官能ホラー作品です。
VFXやCGを駆使したヴァンパイア作品を期待している方には…かなり物足りないかも
しかし、ハンサムな男性が一目ぼれした美女と付き合いたくてヴァンパイアになる選択をしたり(普通は怖がるよ!)
姉妹間のドロドロした確執や複雑な人間関係が絡むストーリーで、女性監督ならではの視点で描かれたヴァンパイアホラーになっています。
キャスト紹介
ジュナ/ジョセフィーヌ・ド・ラ・ボーム
主人公のヴァンパイア。仮の姿は皮膚の疾患を患う翻訳家。
パオロ/ミロ・アンソニー・ヴェンティミリア
脚本家。仕事の為コネチカット州に滞在中にジュナと出会います。
ミミ/ ロキサーヌ・メスキダ
ジュナの妹。ジュナとは仲が悪く、大胆で攻撃的な性格。人間をハンティングしてしまうトラブルメーカー。
クセニア/アンナ・ムグラリス
ジュナの友人の女優。バンパイアのコミュニティのリーダーでジュナが住む豪邸の所有者。
ベン/マイケル・ラパポート
パオロの編集者
アイリーン・ポーラ/チン・バルデス・アラン
ジュナが滞在する豪邸の世話人の人間
あらすじ
アメリカのコネティカット州。
街外れの豪邸で暮らす美しいヴァンパイアのジュナ。
豪邸は友人の所有物で、彼女が留守の間ジュナが借りて住んでいました。
ジュナは、昼間は眠り夜になると森へ向かい、獲物となる動物をハンティングする日々を送っています。
昼間の屋敷には、人間のアイリーンが世話係として雇われていました。
アイリーンは、ヴァンパイアに血の衝動を与えない血液疾患のある家系で、代々この豪邸の世話人をしていました。
ある夜、レンタルビデオ店に返却に訪れたジュナは、1人の男性と出会います。
男性は、脚本家でパオロと名乗りました。
2人は一瞬で惹かれ合います(目と目が♪合う~瞬間♪ by/アイドルマスターより)
店を出て、パオロはジュナを屋敷に送くると、ジュナはパオロを屋敷に招きました。
そして、パオロがジュナを求め始めると…
ジュナは、間違いだったとパオロを拒絶します。
「間違いじゃない。明日電話するよ」
「それはダメよ。お願い…行って」とジュナはパオロを追い返してしまいます。
翌日、パオロはジュナを諦めることが出来ずアイリーンに伝言を頼みますが、ジュナはそれを無視しました。
イケメンのパオロは、女性に不自由などしませんが、どうしてもジュナが頭から離れません。
パオロは再び屋敷に向かいます。
ジュナは、チェーンを掛けたままドアを少しだけ開けました。
「中に入れて」とパオロは頼みますが、ジュナは頑なに拒みます。
「病気が理由か?どんな病気でも受け入れる」とパオロも引き下がりませんでした。
そして、2人は求め合うままドア越しに激しくキスを交わします
しかし…ジュナは欲望を抑えきれず、パオロの舌を噛んでしまい出血させてしまいます。
「帰って!」と動揺を隠せないジュナは、ドアを閉じてしまいました。
おびただしい出血に戸惑うパオロ。
パオロは、家に帰り鏡を覗くと、彼の舌に小さな2カ所の傷が残っていました。
それでもパオロの気持ちは変わりませんでした。
ジュナを求め次の夜、再び彼女の元を訪れます。
ジュナは覚悟を決め、自分の正体を明かし始めました…
「君はバンパイアなのか?冗談だろ」
パオロはヴァンパイアなどいないとまるで信じませんでした。
「いいわ、見せてあげる。これなら襲えない」
ジュナはベッドに自分の両手足を鎖で繋ぎます…
パオロは戸惑いながらもジュナを求め始めました。
そしてジュナは、見悶えながら次第にヴァンパイアに変貌していきます…
「見て…」
そして、その姿をパオロに見せました。
しかし、パオロは怖がるどころか…ジュナを拘束していた鎖を解き始めたのです。
パオロはジュナと愛し合うため覚悟を決めていました…
そして、ジュナはパオロを受入れ、彼の首筋に牙をむいたのです。
勝手に私見考察
ここからはネタバレを含みます
女性の情念を描いた作品
2人は、禁断の愛へ突っ走り幸福感に満たされていた矢先…
ジュナの妹ミミがアムステルダムで問題を起こし、急遽2週間ジュナの屋敷に滞在する事になりました。
しかし、この妹のミミが相当の曲者で、周りの人々を傷つけ楽しむようなトラブルメーカーでした。
そして、ミミは滞在先で人間をハンティングして問題ばかり起こします。
ジュナは、ミミの事が大嫌いで関わり合いたくない存在でした。
一方のミミは、パオロのような存在を妬み絡んできます。
このクセの強い異常者のミミが不気味で怖い…
ですが…彼女の存在は、実にイライラさせるだけさせて、最後はあっけなく終わってしまいます。
どうせなら、ジュナとミミが激しくバトルをして、ジュナが危機一髪!のところを、ミミと浮気したパオロ(ミミの誘惑に負けてしまいます)がジュナを助けてミミを殺す…とか
ミミを焼くとか…首を刎ねるとか…
せっかく前半に、ジュナがヴァンパイアを殺す方法を説明しているのに、伏線に使わなかったのは勿体ない。
女性が持つ妬み嫉みといった情念をヴァンパイアのコミュニティを通して描いた、ホラーというよりもサスペンスな作品でした。